「打出の小槌と放射能ちり」の童話

和歌浦の魚 沖ベラ
和歌浦の魚 沖ベラ

 東大工学部を卒業して東京電力福島第二原子力発電所に勤務し、事故前に退社した後、熊本医大を出たOnodekitaこと、医師小野俊一氏の講演動画「フクシマの真実と内部被曝 2012年1月26日 於やましろ病院」を観て、信じたくはないのですが、ショックを受けました。

 今朝、自分の「しゃらくさい人生覚え帳」を開きましたが、最初何も書く気がしませんでした。PCを終了させようとした時、浮かんで来たので、久し振りに詩を書きました。それが、これです。

 
「打出の小槌と放射能ちり」の童話
                       城 久道

 しんしんと降り積もる
 音もなく 人知れず
 明るい陽射しの中を
 密やかな月光の下に
 しんしんと降り積もる
 放射能ちり

 自然が生み出した物ではない
 金(かね)に目が眩み
 人が造り出した
 打出の小槌
 振れば振るほど 降って来る
 黄金(こがね)の雨

 それを使えば楽になる
 人々は重労働から解放され
 腹一杯食べて 着飾って
 放射能ちりの積もった 街へ出る
 公園では 小鳥さえずり
 幼子は走り回る

 声も出さず 姿も見えぬ
 怪獣が襲いかかろうとしている
 人々は気付いていない
 いや 気付かぬ振りかも
 便利さは捨て難い
 小金でも欲しい

 そういう人達が居るから
 打出の小槌メーカーは安泰
 貧乏な村には 札束を叩きつけろ
 学者の功名心を 金で擽(くすぐ)れ
 政治家は 堂々と金で買える
 うるさい奴らは マスコミで潰せ

 いつの間にか 降り積もる放射能ちり
 人間の寿命を遙かに超えて
 分裂し 放射線を出し続け
 生き物を 化け物としようが
 打出の小槌を放さない俺
 には無関係

 ヒトの寿命は百歳くらい
 後はどうなと きゃあなろたい
 
 しんしんと降り積もる
 音もなく 人知れず
 明るい陽射しの中を
 密やかな月光の下に
 しんしんと降り積もる
 放射能ちり